« NHK義経(17)弁慶がなぎなたを~ | トップページ | 多視点の統合<半島を出よ/村上龍>感想文 »

2005年5月 2日 (月)

半島を出よ/村上龍

推定・福岡ドーム(福岡県福岡市中央区地行浜1丁目付近)マピオンBB地図
現実・JALリゾートシーホークホテル福岡、公式HP

半島を出よ/村上龍著<ハントウ オ デヨ>.

半島を出よ/村上龍
  (BA71524989)
  東京 : 幻冬舎、2005.3
  冊 ; 20cm -- 上;下
  ISBN: 434400759X(上) ; 4344007603(下)
  著者標目: 村上、龍(1952-)<ムラカミ、リュウ>
  分類: NDC8 : 913.6 ; NDLC : KH384

所蔵図書館 12 [by Webcat 20050501]

帯情報
 上巻

北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。財政破綻し、国際的孤立を深める近未来の日本に起こった奇蹟。

「あの丸い屋根の大きな建物は何ですか?リ・キヒが聞いた。乗組員はチャン・ボンスたちの視線の先を確かめて、教えてくれた。「福岡ドーム」。今日は確かプロ野球の開幕戦が行われるはずだと乗組員は言って、野球を見に行くのかと聞いた。まあそうです、とリ・キヒが曖昧に返事をした。あの建物に用がある、チャン・ボンスは声を出さずに呟いた。だが野球を見に行くわけではない。」「種のないパパイヤ」より

 下巻
さらなるテロの危険に日本政府は福岡を封鎖する。逮捕、拷問、粛清、白昼の銃撃戦、被占領者の苦悩と危険な恋。北朝鮮の後続部隊12万人が博多港に接近するなか、ある若者たちが決死の抵抗を開始した。現実を凌駕する想像力と、精密な描写で迫る聖戦のすべて。

「カネシロはうなずいて、おれはここに残る、と言った。見ろ、カネシロは部屋と廊下の死体と血の海を示した。これがおれがずっと夢に見てきた世界なんだ。他にはもうどこに行ってもこんな世界はない。やっと見つけたんだ。だからおれはここに残る。自分でここを始末する。おれの世界だからおれが自分で壊すんだ。」「美しい時間」より

参考文献(Mu:項目のみ抽出)
■北朝鮮関係
■住基ネット・預金封鎖・対米関係・地政学
■国際法
■少年兵
■軍事&安全保障・特殊部隊・兵器・武器
■火薬・爆破・発破
■建築設備
■虫・爬虫類・ヤドクガエル・毒
■医学
■九州経済
■映像資料
■北朝鮮関連音楽CD
●WEB(2005年3月3日現在)


Mu注記
 読書感想は別途掲載。ここでは、作品の表層的形態を注記する。
小説技法
 技法というものの最近を知らないので、それが常識かもしれない事におそれを覚えつつ、これは私のための記事だからメモっておく。
 会話文を「」でくくっていないので、とても読みやすく、意識や情景の流れが自然に味わえた。
 イシハラという、少年達を束ねるおじさんの身をくねらせる身体表現や、奇っ怪な笑い声や、卑猥語を交えた独特の語り口がリズミカルで、言葉芸術の表れを味わった。
 イシハラの身体表現や、ぶっとんだ様子、一種の陶酔狂気のイメージは、映画「レオン」でのゲーリー・オールドマン(麻薬捜査官)を思い出していた。
 高麗(こりょ)遠征軍の軍人達が使う日本語のニュアンスが、てにおは、の使用を上手にずらして使って興趣があった。ただし、それは私が小学校中学校に、真似した用法ではない。「ぼん、ひとさら、こちゅえん~」(坊や、ホルモン焼き一皿50円にしとくよ、うまいでぇ)に比べて、もっと北朝鮮のインテリが使う、一昔前(30年程度以前)の日本語が、微妙にずれている、これは独特の世界をもたらした。
 情景展開に視点の二重性と時間のズレがあるので、一つの情景を、福岡県民、高麗遠征軍、両方の視点から見つめることができる。このことで、客観性を確保している。福岡市から派遣された公務員女性が、様々に思い悩みながら占領軍の事務をかたづける情景があり、その後で、高麗遠征軍女医の目から見た情景が描写される。
 暴走族が遠征軍駐屯地の廻りを数百台(バイクや自動車)で走り回る、それを見た野次馬や高麗遠征隊の視点。その後、しばらくして暴走族からの視点による遠征隊の様子。

 参考文献を見れば分かるが、一つの世界を描くのに膨大な分野から資料・情報を使い、消化している。こういう情報小説は20年以前からフォーサイス『ジャッカルの日』などによって主流になっているが、それにしても、口があんぐり開いたままになるほど、どれもこれも意表を突くものだった。そもそも、北朝鮮が九州を独立させるという想定が意表をつき、それを精密に施行するための様々なアイテムが、ぴたりぴたりとはまっていく。これは快感である。資料・情報を極限まで使った「資料・情報小説」という属性が生まれた。

読書感想
 別の記事を新たに設けます。

|

« NHK義経(17)弁慶がなぎなたを~ | トップページ | 多視点の統合<半島を出よ/村上龍>感想文 »

読書の素」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/22035/3935828

この記事へのトラックバック一覧です: 半島を出よ/村上龍:

» 多視点の統合<半島を出よ/村上龍>感想文 [MuBlog]
承前(MuBlog) はじめに  村上龍の「半島を出よ」は文学・小説の持つ「統合力」を明確に表現した作品として、後世に残って欲しいと思った。  私はここに国際情 [続きを読む]

受信: 2005年5月 3日 (火) 11時45分

« NHK義経(17)弁慶がなぎなたを~ | トップページ | 多視点の統合<半島を出よ/村上龍>感想文 »