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2005年1月17日 (月)

0501170・北方謙三『水滸伝』十一「天地の章」

承前
 久しぶりだ。しらべてみると先の記録は2004/09/16になっていた。十巻を読み終えてから、丁度四ヶ月経過した。昨日は日曜で、ぼんやりした時間がとれ、思い立って北方水滸伝十一を手にした。半日で読み終えた。

楊令、子午山にて鶺鴒(せきれい)の剣を構え、晁天王、曾頭市(そうとうし)にて天空の枢(す)より墜つ。 君は永遠(とわ)に、馬右(ばゆう)にあり。 短き箭(や)、毒牙をもて奔る。 輝ける光をめざして。
 この巻から第三部ではないかと思った。  四ヶ月の間隔をおいて読んだせいかもしれないが、雰囲気が変わった。多くの登場人物がともかく一働きした。そして、次に備えるための休息に入った。

戦場の心的外傷
 その節目は、十巻の若き官軍将軍、呼延灼(こえんしゃく)との戦いに、梁山泊が初めて大敗を経験したことだろう。ムチ使い(双鞭)呼延灼の連環馬(れんかんば)作戦に、梁山泊の多数の将校、兵が死亡し、生き残った者達もいまだに心的外傷を癒しきってはいない。三十頭の装甲馬を鎖でつないだとき、その疾走する姿は、一匹の巨大な獣になっていた。獣の蹄に踏みにじられた者は死、かすった者さえも廃人のようになってしまった。
 戦場の癒しがたい恐怖。
 どうやって立ち直っていくのか。あるいは、立ち直れたのか。

宋江と晁蓋
 最近ずっと二人の間に論争がある。部下達はどちらとも一切その件については話をしない。聡明な二人は梁山泊に派閥ができることを避けた。ついに、間にたった文官・軍師の呉用(ごよう)が三つ目の論陣をはることになる。
 宋江(そうこう)の言い分は、兵十万に達するまでは宋帝国との全面戦争を避けるべし、だった。
 晁蓋(ちょうがい)の言い分は、兵三万で外に打って出る。いまがその秋(時)、全身がそう訴えている、だった。
 呉用は、その間にたって、どちらにくみしても梁山泊には敗北がおとずれる、と計算した。
 官軍は日に日に精強になっていく。梁山泊が年月をかけて兵十万を蓄えたころには、とても勝てない。
 しかるに今、官軍と寡兵で戦えば、官軍の総攻撃に耐えられるものではない。
 いずれにしても、負ける。
 さて、解はあるのか。
 呉用は作戦方針について、初めて宋江を前にして、二人の論争に割って入った。

 帯情報には、この巻の重要なことの全てが含まれている。これを解き明かせば、いわゆるネタばらしになってしまうので、よしておこう。巻末は、まさしく、次の巻に読み進まねばならない状況に立ち至った。
 作者、手練れ、読者それにのる。

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