The Lord of the Rings : the Return of the King
ロード オブ・ザ リング 王の帰還
コレクターズ・エディション
発売:日本ヘラルド映画株式会社
販売:株式会社ポニーキャニオン
DVDには201分と記してあるから、3時間20分の長尺映画だが、あっというまに見終わった。
原作は「指輪物語/トールキン、JRR」で1954年らしい。
このDVDは2004年発売のようだ。
ロードオブザリングは、これで都合3編みたので、終わりなのだろう。
感想は。
こういう映画は今後も制作がむつかしいと思った。人もお金もかかったろうし、なによりも結果が素晴らしい。3編とも、DVDから目を離せなかった。
王の帰還
DVDは昨日、古くから知っている、えどるんが譲ってくれた。えどるんの鑑賞眼、批評眼は私の中では信頼が大きいので、安心して鑑賞に入った。事前に聞いたのは「泣けるよ」という評価だった。
で、私の結果は、ただしく泣ける作品であった。古典的な用法を使うなら、これは教養映画である。で、教養とは主人公が成長していく過程が描かれたものである。フロドという少年は大人になった。そして、伝承の王の継承権をもつ者・アラゴルンも、戴冠式をあげることができた。めでたし、めでたしである。
そこに至る経過は、重荷の連続だった。とくに、フロド少年の旅の目的、「指輪」が作られた火山の溶岩の底に、それを沈めるという目的を果たすまでの重荷は、相当に胸にこたえた。
指輪は、権力、世界を自分の手に握る力をもたらす象徴なのだから、指輪を手放すことは、現世のあらゆる権威、権力を棄てることにひとしい。
しかしそれをしないと、世界は冥界のままとなる。
見ている私でさえ、フロド少年に、もう指輪をさっさと指にはめて世界を君のものにしてしまえ、と何度も思い、彼も何度も心の危機におそわれる。途中フロドは疑心暗鬼にかられて、みずからの親友さえ遠ざけてしまう。
さらに、総てが終わった後も。
フロドは呟く「時が癒せない傷もある」。
このセリフは字幕だが、じんとこたえた。
そしてそのセリフに納得できるほどの背景を映画はすべて表現している。
世間的な言葉でいうなら、戦争帰還兵の癒しきれない深い傷、といっても間違いではない。
そういう目で見るなら、とてつもなく、重く深い映画だった。
現代映画技術
昨年、第一編と二編とを観たときから思っていたが、映画というものがこういう映像を創り出すまでの年月を味わった。
ロケ地はニュージランドのようだ。
俯瞰による、その景観は目眩がする。
城の全景、こんな風に撮影ができるのは、信じられない、とそう思った。
戦争の駆け引きは、「お子様映画でしょう」というようなセリフが抹消される。
日本と異なり、切るというよりも、殴る蹴る叩くの世界である。
異形の兵器、異形の兵士、妖獣、これらの総てが、現実そのもののように、画面一杯に描写される。
美男美女はこのうえもなくファンタスティックに、そうして狂気の王も、庶民も、兵士も、汚れと汗と血とが画面からにおってくる。
こういう原作を創った英国、そして映画を作った米国。
たいしたものであると、心底脱帽する。
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コメント
私も、一度 地上波で放映された部分を観ました。
この作者は直感として、ある民族の叙事詩を描こうとしたんではないか?と思いました。
あとで、調べると大学で”アングロサクソン語”を教える教授だそうですね。どうりで・・・・と納得した。
アングロとサクソン族は東ゴート族と分かれて(広義ではゲルマン)、ヨーロッパの旅に出る。多分にこの民族の歴史の叙事詩を描きたかったんでしょうね。
Muさん”海部族”の歴史、叙事詩を描いてくれんか・・・・。
投稿: jo | 2004年8月22日 (日) 17時24分
JOさん
原ヨーロッパ、ガリア、北欧神話、ケルト、……。お題はそろっていましたね。キリスト教関係が希薄なのは、すこしすっきりする。
映画は、対立戦争においては勧善懲悪。しかし主人公レベルでは複雑微妙な陰を見せていました。
巨大な象が戦争に使われるのですが、迫真です。しかしその乗船者(象を船と見立てています。砂漠を海とみるのと同値ですね)が黒いマスクで、何となく、アラビアのロレンスの親衛隊のようで、……。
海部族の叙事詩って、むつかしそう。「中つ国」というのが物語によくでたが、さて。中津とか中スでは、ねぇ。
投稿: Mu | 2004年8月22日 (日) 20時49分