ほうしょうかん:鳳翔館・平等院ミュージアム
鳳翔館・平等院ミュージアム(京都府宇治市宇治)マピオンBB地図
鳳翔館というのは、世界遺産・宇治・平等院の博物館である。かつては同地に宝物館としてあったが、21世紀初頭に現代的な博物館に生まれ変わった。
そこに平等院鳳凰堂と同じ程度の価値を味わっている、と記せば非難を受けるかも知れないが、私は時折そう思うことがある。平等院は過去の建造物である。そこに人類が生み出した新知見や新技術、新文化をそそぐことはもうできない。今の私とは、明確すぎる断絶がある。
平等院といえば、光源氏と葵の上との間に設けられた一子、夕霧の住まいがこの地をモデルにしていたとは、よく耳にする話である。どこかの神の手によって、平等院を発掘したら、夕霧の関連遺物が出てきたなどと新聞に載る日も楽しみだが(笑)。
鳳翔館は現代から未来にかけての建造物である。
エアコンも快適で、照明は夢幻。
そこここに国宝が生きている。それがレプリカなのかどうか、どちらでもよい。雲中供養菩薩が、半数の26像ほどを間近に見られるのは至福である。おちついてよく観ると、菩薩が手にしている楽器は本当に多様だ。想像もつかない、どんな音が天上の楽音として流れるのか、一度聞いてみたい。試聴する装置はさすがになかったようだ。そんなものは直ぐに可能だろう。
平等院の屋根にある一対の鳳凰も間近に見られる。よく見ると奇怪な生物だ。
グッズには、雲中供養菩薩のトランプもある。今度行ったときには、ぜひ買って帰りたい。
平等院鳳凰堂をぞろぞろ見るより先に、疲れぬ先に鳳翔館をじっくり歩くことを、お奨めする。
ただし、平等院が私の別荘ならば、やはり鳳凰堂の方がよい。広々として、池が見えて、解放感がある。夏はクーラー無しで、さぞかし風が心地よいことだろう。金色の仏様のそばで午睡するのも、これまた至福。
参考サイト
平等院オフィシャルページ:鳳翔館
平等院ミュージアム鳳翔館
<Mu注:博物館の写真、データ、神居文彰住職のエコミュージアム論などがある>
雲中供養佛『戴冠詩人の御一人者/保田與重郎』
日本浪曼派創刊号表紙写真より「鳳凰」(雄松堂復刻版)
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コメント
以前、NHKの番組で平等院の再現をCGを使い、放送していました。あのお堂の中は極楽世界だったでしょうね。金色に輝く世界だったと記憶にあります。
雲中供養菩薩が楽しく楽器を演奏し、死後の世界はこないに素晴らしいと、素晴らしくありたいと思ったんでしょうね。
平安の末法思想が充満し、公家さんもここで救われたんでしょう。
投稿: jo | 2004年8月10日 (火) 13時49分
鳳翔館はいいですねえ~~。
オープンが2001年3月とありますから、何も知らずオープンしたての8月に、ここを訪れていたことになります。
エントランスが長くて、高くて、あれは地下にもぐっていたんですね。
残暑の厳しい日で、汗だくなって、鳳凰堂を見回った後でしたから、鳳翔館にたどり着いて、涼をえて、生き返りました。
可愛らしい雲中供養菩薩たちで、楽器が様々なのに、驚きました。
鳳凰堂のなかの様子を実際に見た後、この鳳翔館で極彩色豊かにその中が再現されているのを見て、来て良かったという想いを強くしました。
私にとっては、2度目の宇治で、初めての平等院訪問でした。
(学校の遠足でも行ったことがなかったんですよ。^^;)
投稿: wd | 2004年8月10日 (火) 16時38分
JOさん
平安貴族の末法思想耽溺。
これは、私も日頃味わいます。
宇治の木幡研からみる夕方の風景。西方、その山並みに黄金と朱をまき散らし、紺青の雲が立ったとき、まさに浄土とはこういうものなんだろう、と思います。
五色の紐が空から私の手に降ってくるような幻想美ですよ。
地図でみると鳳凰堂は正確に東西です。仏さんに向かって座ると、人は真西をみることになりますね。
で、この鳳翔館は照明や色彩で、ちょっと浄土っぽいです。
蛇足ながら以前観覧したおり、そこにあるディジタル関係諸設備はF社のものでした。前掲の三島文学館はI社でしょう? なかなかに、こういう会社の博物館部門もおもしろそうですね。もっとも、儲けは少なかろう(邪笑)
投稿: Mu | 2004年8月10日 (火) 17時43分
WDさん
観覧済みとは、それはよかったですね。
宇治は有名ですが、京都や奈良の人だって、なかなか腰をあげにくい観光地ですから。かえって、近畿以外の方が訪れるのじゃないでしょうか。
私が九州各地の新しい未踏地博物館を掲載したのは、この鳳翔館を観ていたからかも知れません。
素人には、たとえば国宝が道ばたに積み重ねてあっても、なんの感興もおきないし、目にとまることもないでしょう。
教育というか、雰囲気というか、こういう博物館の工夫があって、やっと「すばらしいものがあるんだなぁ」と、思えるわけです。
お寺の暗い祭壇にある仏さま、くすんで、暗くて、真っ黒の彫刻、仏像を観て、それで感動するのは、一定以上の感性とか修練を積んだ人しか、無理です。
勿論、わたしの尊敬する故人の幾人かは、生まれながらにそういう環境でそだったから、自由自在に「美」や「信仰」を味わえるわけですが。
……、というわけで、平等院は今後も訪れて、また、報告を掲載いたします。
投稿: Mu | 2004年8月10日 (火) 17時53分