日本・文学・小説:グランド・ミステリー/奥泉光
帯情報
小説のあらゆる可能性と魅力を極限まで追求した、世紀の大作
真珠湾攻撃の只中で起きた海軍大尉の怪死
その謎に端を発する空前絶後の一大ミステリー・ロマン
昭和十六年十二月八日、真珠湾攻撃、日本軍が歴史的勝利を収めた直後、空母「蒼龍」に着艦した九九艦爆搭乗員、榊原大尉が操縦席で不可解な服毒死を遂げた。伊号潜水艦先任将校、加多瀬大尉は、未亡人となった志津子の依頼を受けて、榊原の死の真相を追いはじめた。
やがて榊原の行動から「空白の一週間」が浮かび上がった。だが、謎を解く鍵を手にしたのも束の間、突然、志津子が姿を消した。
正体不明の鎌倉の研究所[国際問題研究所]。死を宣教する極右団体。未来予知の神秘的異能を持つ男。加多瀬自身の脳裡に巣くう、砂に侵食されたヴェネチアの風景。運河の岩壁に刻まれたラテン語の文字は何を意味するのか?
錯綜する謎の糸は加多瀬を時空を超えた迷宮へと導き、そして戦局はミッドウェーへと雪崩れ込んだ。
純文学界のエース、奥泉光の剛腕が炸裂する20世紀最後の大作。
怒濤の1600枚書き下ろし。
Mu寸評
2/4
四つの<物語>の二つ目である。
グランド・ミステリー用の評価基準が必要である。
既成のジャンルがモザイクになっている。SF、ミステリ、戦記、歴史、文学追想、……。読者は好みのジャンル観によって目を曇らせてしまう。すると「ミステリは、誰それが自殺し、遺書がなくなった点にしかない」というような、単純な不満がでてしまう。ミステリと思うからそうなる。
ミステリもSFも、なにも知らない、いろいろな「お約束事」からは自由な立場で読むのが良い。
初めて物語を読む初々しい態度をもつと、作者のおもしろさ、その作品の味わいが楽しめる。
私は「戦争=日本の敗北」その一点で読んでいた。しかし先に挙げたすべてのジャンルが好みだったので、読み終えたときは「モザイク」が、まだら模様の綺麗な球形に見えた。
上等な作品であった。
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コメント
73歳の元飛行機のパイロットの方が私のBlogを見て、何回かメールを頂く関係になりました。その方の飛行機の免許をとる時の教官が
昔、真珠湾攻撃の時の隊長で、空母、”蒼龍”に乗っておられたと聞きました。その後、大佐迄出世されたそうですが、民間に転身されたと聞いています。
第二次大戦が舞台なのですね?ベネッチアがどう絡むのか、ムッソリーニと日本との関係でしょうか?ドイツ、イタリア、日本の三国同盟と関係があるんでしょうね。
投稿: jo | 2004年6月19日 (土) 11時00分
JOさん
蒼龍が空母だったのか、駆逐艦だったのか、潜水艦だったのか。
海のものだったことをのぞいては、時間の流れで変化するのかもしれません。
今夜の新撰組はよかった。土方の奸計はあたり、芹澤はそれに乗った。
脚本とか演出とかが冴えていますね。
TVの最後に付録であった、永倉シンパチのメモが時の流れを変えたのかも知れない、遡って。
投稿: Mu | 2004年6月20日 (日) 20時54分