愛しのコミックス(漫画)
日曜の朝、ぼんやりしています。こういう気分の時に、いつも力づけてくれた作品があるのです。世間ではコミックスと云うようですが、私は漫画と内面で語っています。
昨日今日の話ではありません。私は小学1年くらいから、ずっと、漫画を読んできました。そして、この10年近く手元から離さなかったのが、藤田和日郎先生と、荒木飛呂彦先生なのです。
藤田先生には前哨戦があって、1990年から「うしおととら」というのが全33巻もでております。これは2回通読しています。また荒木先生のは「ジョジョの奇妙な冒険」として、1987年から全63巻、そのパート6(ストーンオーシャン)が17巻。すでに80冊読んだ勘定になります。
これくらい入り浸りますと、私の世界観の数割が、藤田+荒木のイメージに包まれているのが確実で、それは時にはっきりと意識することがあります。
ともあれ、今朝はうすらぼんやりとしていますので、難しいことはよしにして、この両大家の最新作を記し、終わりなき世界を言祝いでおきます。
からくりサーカス(32)/藤田和日郎
あ、「からくりサーカス」でしたね。からくりの良さは、もちろん日本や中国やフランスの田舎が出てくるわけですが、才賀勝(さいがまさる)少年の不屈の魂が気に入っています。それを助ける超絶フランス美少女「シロガネ」が、想像を絶する無敵のヒロインなのです。まず、シロガネに勝てる「敵」がいないのが爽快です。そして、でてくる大道具小道具が、精巧を極めたカラクリ人形なのだから、この背景の広さ深さは測り知れません。時代も空間も、日本、フランス、中国と国際性ゆたかで、毎巻あきさせることがないです。
読み終わるたびに次を欲し、おどろくべきことは、読み終わるたびに過去を回想する、そんな漫画です。
スチールボールラン/荒木飛呂彦
その痛みは、わかりにくさに近いのですが、なのに次巻に手がでるのは「なんとか、理解しつくしたい」という奇妙な感覚なのです。たとえば、なにか得体の知れない怪物が「チュミミー」という声を発して飛びかかってきたら、そして主人公(各パートで主人公は引き継がれていく)が絶体絶命の、これ以上はもう無理でしょう、もう終わらざるを得ないでしょう、という窮地に立ち至ったなら、そこでその巻が終わっていたなら。
荒木先生の世界も壮絶無比です。ジョナサン・ジョースターから始まって、6代目主人公は「空条徐倫(くうじょう・じょりん)」という、お臍まるだしの少女なのです。神話あり、各国史あり、ナチあり、杜の都仙台あり、高圧線鉄塔に住む怪人あり、・・・なんというか、これだけの世界をきっちりあますところなく描き切る才能は、漫画家の偉大さを骨の髄まで味わわせるにたるものです。
私は思う。藤田カラクリも、荒木ジョジョもしらないままに朽ち果てていく人たちが、あはれです。ひとたび人として生をうけたなら、この世界をしっかり観ずして、どうして「生きた」と申せましょうか。合掌。
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コメント
( 少し、敷居が高くて、来にくかったのですが・・。)
「藤田先生」「荒木先生」の下のお名前は、なんてお読みするんでしょう?
藤田先生の田舎の生活というのは、Joさんの少年シリーズの世界なのかな、と想像しました。
投稿: wd | 2004年5月30日 (日) 10時47分
WDさん
ふじた・かずひろ
あらき・ひろひこ
ですね。
jo世界といえば、そういう雰囲気もありますね。
興味あれば、面白いですが、壮絶な冊数ですから、図書館で探すのがよいです。
投稿: Mu | 2004年5月30日 (日) 14時35分
「からくりサーカス」も「ジョジョ」も知ってます!!
先生も漫画を読まれるのですね。なんだか想像ができないですよ。
「ジョジョ」は結構前からありますよね?少年週刊ジャンプに連載のころよく読んでました。
そういえば、一番最近読んだ漫画は、コナン君くらいです・・。
投稿: 羊 | 2004年5月30日 (日) 18時38分
羊さんや
漫画なしでは、私はないね。
しかし、カラクリもジョジョも、女性が知っているのは分かりにくい。あんなに、おっそろしい、髪が一夜にして真っ白になりそうな。
投稿: Mu | 2004年5月30日 (日) 19時19分
後両名の漫画は存じていません。しかし、先生もジャンルが広いですね。才賀さんの漫画にはフランスの美少女ガ出てくるらしいけど、私の少年時代には雌犬のメリーしか出てこんな~。日本の漫画は世界に無いレベルの高い世界だと思います。コミックというジャンルではないと思います。それは、手塚さんとか貞岡さんとか、素晴らしい先輩と無名の漫画家が日本の文化を創りあげたと思う。
投稿: jo | 2004年5月30日 (日) 21時20分
JOさん
藤田さんのはね、田舎の様子が、すーっと画の中に入り込んでしまうような、そんな体験を私は味わっています。
荒木さんは、世界中に本人が旅行しているふしがあって、各地の情景や人情がトンガッタ雰囲気でびしびしつたわってくるのです。
投稿: Mu | 2004年5月31日 (月) 11時58分