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2004年5月23日 (日)

日本・文学・小説:「喪神」/五味康祐

By NDL-OPAC 913.6-G59h
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喪神/五味康祐著

MuBlog感想
 五味さんの「喪神」は芥川賞受賞作である。第28回(1952年下半期)の受賞で、同時受賞者が松本清張「或る『小倉日記』伝」である。両短編ともに、非常に心に残る作品なのだが、ここでは「喪神」についていくつか記しておく。

「瀬名波(せなわ)幻雲斎信伴(のぶとも)が多武峯(とおのみね)山中に隠棲したのは、文禄三年甲午(きのえうま:こうご)の歳八月である。この時、幻雲斎は五十一歳。---
 翌る乙未(きのとひつじ:いつび)の歳、関白秀次が高野山(こうやさん)にて出家、自殺した。すると、これに幻雲斎の隠棲を結びつける兎角(とかく)の噂が、諸国の武芸者の間に起った。秀次は、曽(かつ)て、幻雲斎に就(つ)き剣を修めたからである。
 一体、幻雲斎の業は妖剣だと謂(い)われている。関白ともあろう身が、一妖術者に師事した理由は分明でないが、その機縁に就(つ)ては、次の様な挿話があった。---」
 MuBlog注記:現代読者のために「読み」を多数付加しました

 幻雲斎の剣は、夢想剣と記されている。中島敦の弓矢を忘れた名人伝を思い出させる。
 それよりも。 
 五味さんの文章の波の上で、読んでいる間に喪神状態になる。これが文学なのだと二十代に思った。幻雲斎の描写はわずかなのに、くっきりと幻雲斎の表情が浮かびあがり、霧の中に切っ先だけが弧を描いていく。つかみ取れない。切っ先は朧じみている。

 五味康祐の文章は端麗である。
 だから、私もこれ以上「喪神」について記すことができない。しかし、こういう文章に接すればこそ、現今の小説になかなか手が伸びない。むろん、我が身は恥と思い至る。
 五味さんの、短編が読めるだけでも、幸せと思っている。

 幻雲斎の事実は知らない。墓が奈良県高市郡高山寺にあるという。五味さんのあやかしなのか、それとも幻雲斎の真実が、唯一墓でもって、事実とリンクしているのか。

参考サイト
  早稲田と文学(五味康祐)
  直木賞から芥川賞(松本清張)
  五味康祐(文学者掃苔録)

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